研究概要 |
(1)ハイマツならびにキタゴヨウの遺伝的変異の解析 わが国に広く分布するハイマツとキタゴヨウの2種について,それぞれの種が保有する遺伝的変異の解析を行った.ハイマツについてはわが国の18集団から,各50個体の針葉をサンプリングし,アイソザイム分析を利用して遺伝的変異を計測した.その結果,わが国のハイマツは集団内に比較的大きい遺伝的変異を保有していることが明らかになった.また,集団内の遺伝的変異は北海道の集団で最も大きく,本州の南の集団になるにつれて集団内の遺伝的変異が小さくなる傾向があった.このことはハイマツの分布変遷の反映であると考えられた.また,集団間の遺伝的変異も比較的大きかった.これは,わが国のハイマツ集団が山岳の上部に隔離分布しているためであると考えられた(1996).キタゴヨウの遺伝的変異については,わが国の8集団から針葉をサンプリングした.現在,アイソザイム分析を行っている. (2)ハイマツのクローン構造の推定 赤石山脈の間ノ岳においてハイマツのクローン構造を推定するためのコドラートを設置した.コドラートの大きさは38m×18mである.このコドラートを縦横それぞれ2mごとに区切り,交点(200点)のハイマツの針葉をサンプリングした.サンプリングしたハイマツをアイソザイム分析とRAPD分析によって多型を検出し,個体識別を行った.その結果,幾つかのクローン構造はあったが,その規模は小さかった. (3)ハイマツ・キタゴヨウ間の種間交雑 飛騨山脈の立山においてハイマツ・ハッコウダゴヨウ・キタゴヨウの針葉を採取した.採取した針葉を用いて,アイソザイム分析を行った.その結果,三種間に対立遺伝子頻度のクラインがあった.このことからハイマツ・キタゴヨウ間に遺伝子拡散が起こっていることが推測された.
|