本研究の目的は、自然生態系に適応した適正で健全な地方文化都市を目指した流域管理の施策・対策を提言するために重要水源地流域の森林流域の評価を行うことである。平成8年度は、ダム水源流域のリモートセンシングによる植生活性度評価、水源流域の降雨流出過程での土壌水分の変化と流出特性、水源流域の植生変化が流況特性に及ぼす影響、水源林の整備方法に関する研究を行った。その研究成果は以下のとおりである。 1.四国ダム水源地6流域の1994年と1995年の水文資料について、流況解析をおこない、流況に異常渇水年の影響が残っている流域と回復した流域を安定化率を用いて判定した。また、異常渇水年、平年(1989年)、1995年の衛星データを用いてNDVI値を比較したところ、尾根部の森林植生が異常渇水によって活性度が低下し、谷部の森林植生は影響を受けていない傾向が見いだされた。さらに、異常渇水年に影響を受けた翌年の森林植生回復の有無が斜面単位で判定された。これら斜面単位での差異は、今後の森林管理のあり方に対する基礎的資料であることを示した。 2.瀬戸内の江田島3流域において、源流部斜面の上部と下部に、土壌水分計を各4深度に設置し、降雨流出に伴う土壌水分変動の観測を行った。渇水年に低水部が異常減水しなかった健全流域と林野火災を受けた流域との比較では、降雨による浸透に伴う各土層深度の水分動態に差異があり、健全流域では深部への浸透量が多いことが推定された。 3.東京多摩川小河内ダム水源流域の流況資料と森林植生の変化との解析から、森林植生の増加に伴う年損失量の増加、伐採の減少と平水量の増加の関係が見いだされた。 4.愛媛県における具体的な水源林の整備指針の策定を行い、具体的に市町村が中心となって水源林を整備する実践的仕組みとその技術的指針を作成した。
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