1.木目のもつ見た目のイメージを形成する因子には、年輪の平行性、年輪間隔、早晩材の濃淡コントラスト、色調、多相パターン(ミクロテクスチャ、マクロな濃淡変化)などが考えられる。本年度は、晩材率、年輪密度、年輪幅ゆらぎが、「派手な」「ちらつく」「感じのよい」イメージに与える影響について、これらの変数を種々に変えた画像をコンピュータ・グラフィックスを用いて系統的に作成し、アンケート調査を行なうことにより明らかにすることを試みた。木目とは限らず白黒の縞模様についても、木目と共通したイメージを与えることが考えられ、それぞれのイメージに対応する視覚物理量の計算式あるいはアルゴリズムもしくはニューラル・ネットワークがあるはずである。現在、アンケート調査結果に最もよく適合するアルゴリズムを検討中である。 各種の非木質系材料、木材、木質材料及び紙の「自然さ」「生命感」についてアンケート調査を行い、木材や木質材料は非木質材料に比べて「生命感」を与えるが、無機材料である石特に堆積模様をもつ大理石は「生命感」を与えることが明らかとなった。また紙の原料は木材ではあるが、一般的にあまり「生命感」を与えない。しかし種々の紙を比較すると、ある種の和紙のように木材の繊維や繊維の束が見えるほど、「生命感」のイメージを強く与えた。 3.木製楽器のもつ独特の音響的イメージ、例えば「やわらかい」「自然な」イメージはどのような音響的特徴によるのか、木製楽器及び金属製楽器の音を収録し、これを周波数解析してさらに逆にこれらの音を大型計算機を用いてシンセサイズし、スペクトルを変えたり、周波数により減衰速度を変えたりして、波形のどの因子がどのようなイメージのどの程度関与しているのかを、作成した音を聴かせてアンケート調査を行い検討した。その結果、木材音の特徴は、減衰が速くしかも音高側の減衰が特に速いことが挙げられる。
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