研究概要 |
前年度の研究結果から、セルロース系サーモトロピック液晶ポリマーの構造一物性相関を研究するためには、まず位置特異的置換セルロース誘導体の調製法を確立することが必須であることが判明した。現在、セルロースの6位以外(2と3位)の水酸基にれ目的の官能基を位置特異的に導入することは不可能であり、これはセルロースの化学合成法が確立して成し得るものである。既に前年度セルロースの化学合成法を確立したが、本年度はまずその重合機構についての知見を得るために、種々の置換基効果について検討した。 その結果、glucose 1,2,4-orthoesterの開環重合によるセルロースの合成では、3位のbenzyl基は重合の立体および位置特異規制に、また2位のpivaloyl基は重合の位置特異規制に必須の官能基であることが判明し多。また、段階的合成法によるcelloeicosaose誘導体(重合度20)の高収率合成にも成功した。すなわち、開環重合法および段階的合成法の両方によるセルロースの合成法を確立した。かくして、目的の位置特異的置換セルロース誘導体が調製し得る方法を確立し得た。次いで合成セルロース誘導体から、2位アルキル化セルロース誘導体の調製法を確立した。本法は2位アシル誘導体の調製にも適用される方法である。得られた2-propyl celluloseは180-200℃で溶融し、酢酸、アルコールに可溶であること、またそのacetateの融点は125-131℃(CTAのそれは232-245℃)であり、CTAが不溶である酢酸、アルコールなどの溶媒に可溶であることが新たに判明した。確立された方法により一連の長鎖アルキル基も導入し得る。本研究によりセルロース誘導体の溶解性、熱溶融性および液晶性に関する基礎的知見が集積し得る手法が確立された。
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