自然環境保護および木質資源情勢から、各種の木質ボードが広葉樹合板の代替材料として使用されつつある。本研究では、それらを面材として用いた耐力壁の釘接合部の衝撃繰返し負荷に対する性能について検討し、耐震や耐風の構造設計施工に関する基礎資料を得ることを目的としている。本年度においては、木質ボードとしてパーティクルボードとMDFを用い、その厚さが釘接合部の衝撃繰返し負荷に対する性能におよぼす影響について、広葉樹合板の場合との比較のもとに、各種の二面せん断試験を行った。 まず、静的二面せん断試験での釘接合部の基本的な荷重-すべり挙動について検討するとともに、その荷重増大に伴う接合部の釘変形や釘着材部の変形破壊の変移を軟X線写真観察によって追求して、負荷レベルと接合部の剛性、吸収仕事量および破壊様態との関係について検討した。つぎに、落錘型の繰返し衝撃二面せん断試験を行った。その結果、繰返し負荷に伴い残留する永久すべり変位量は、いずれの種類の側材(面材)においても、繰返し初期20〜30回程度までは急増し、その後は漸増する傾向を示すことが確認された。また、いずれの種類の側材においても厚さが15mmの場合に最も小さな疲労速度を示し、本実験条件のように、釘の長さを一定とし、側材の厚さを変化させた場合、各部材における釘の外力負担割合により最適値が存在することが確認された。なお、合板およびパーティクルボードは、繰返し負荷に伴い釘着部の圧密化を生じ、その部分の圧潰変形が進行し難くなることを、最大すべり変形量および試験体の加速度の減少によりを確認し、さらに、部材の圧密化に伴い負荷治具の反発における加速度が増大することを確認した。また、他の材料に比べ大きな永久すべり変位量を示したMDFでは、とくに板厚が薄い場合に顕著な釘頭部の部材へのめり込みが軟X線写真により観察された。
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