研究概要 |
本年はホシザメにの系群解析,特に繁殖生態の解析を中心に研究を推進した.日本近海で定期的に標本採集が可能であった青森,東京湾,舞鶴,下関,台湾近海の5カ所の繁殖生態を比較した.雄の成熟年齢は台湾が最小で一部は既に1歳で性成熟にに達し,3歳で台湾,下関,舞鶴の大部分,東京湾のごく一部が成熟するが,東京湾では5歳,青森では7歳になって初めて成熟が完了した.雌では台湾産の一部が2歳で成熟してもっとも早く,5歳では台湾,下関,舞鶴,6歳では東京湾の雌のほぼすべてが成熟するが,青森産は6歳でも未熟の個体がみられ,成熟年齢はもっとも高いと推定された. 成熟全長については,雄では台湾産がもっとも小さく,さらに台湾,下関,舞鶴の全個体および東京湾の大部分が成熟する701-800mmの全長で初めて青森産が成熟し始めた.雌では台湾産の半分が成熟する601-700mmで下関と舞鶴の一部が性成熟に達するが,東京湾では成熟体長がこれよりも大きく,さらに青森では901-1000mmでも未熟個体が出現した.おおむね成熟年齢と全長は雌雄とも台湾<下関=舞鶴<東京湾<青森の傾向が顕著であった.青森と東京の年齢差は約3歳,全長差はおよそ300mmに及んだ.青森を除く雌の繁殖サイクルは10-12ヶ月で毎年繁殖するものと推定されたが,青森だけは特定の交尾期を持たず,妊娠に休止期があるものと推測された. 出生全長は東京湾では200-300mmと幅が広く,しかも初期の成長が早いという特異な初期生活史を有するが,台湾では250mm,下関・舞鶴では300mm,青森では300-350mmであった.一腹の退治数は母全長とともに増加するが,同一の母全長ではおおむね東京湾<青森<下関=舞鶴<台湾の傾向が見られた. このように,繁殖生態には顕著な地理変異が見られ,複数の系群の存在が示唆された.
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