研究概要 |
本年はホシザメの成長と寄生虫の寄生率を中心に研究を推進し,前年及び前前年の研究成果を総合して,日本周辺海域におけるホシザメの系群の存在を明らかにした.さらに,外洋性サメ類の系群解析の第1歩としてヨゴレの年齢,成長及び繁殖の研究を行った. まず,ホシザメについては日本近海で定期的に標本採集が可能であった青森,東京湾,舞鶴,下関,台湾近海の5カ所の年齢と成長を比較した.脊椎骨を用いた年齢解析では,輪紋の形跡時期に海域感の差は認められなかった.0歳時の推定体長では東京湾<下関<舞鶴<青森の順で,雌雄ともに明瞭な差がみられた.雄の成長は台湾がもっとも悪く,青森がもっともよかった.3歳を越えると下関が舞鶴を上回り,東京湾は4歳を越えると舞鶴を上回った.東京湾の成長量は3歳以降最大となったが,0歳時の体長が小さかったために,青森には及ばなかった.最高齢は台湾5歳,舞鶴・下関6歳,東京湾8歳,青森9歳と北に向かうにつれ,寿命が長くなる傾向がみられた.次に寄生虫の寄生率を比較したところ,粘液胞子虫,線虫,カイアシ類で寄生率に差が認められた.他の生活史特性で差が認められなかった舞鶴と下関でも寄生率では差がみられた.条虫類については東京湾と青森で比較したところ,8種のうち7種で寄生率に差が存在した.正準判別分析でも両者は明瞭に判別され,東京湾では100%の正判別率であった.以上総合すると,日本周辺海域には,少なくとも陸奥湾から津軽海峡以北,日本海側,太平洋側に東京湾と銚子の2つ,さらに台湾の計5つの系群が存在することが示唆された. ヨゴレでは世界に先駆けて,太平洋産の年齢,成長,繁殖という生活史の重要な側面を明らかにし,南太平洋と北太平洋では系群が異なる可能性を示唆した.
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