研究概要 |
広島湾の奥部から中部にかけての活発なマガキの養殖活動が広島湾内の物質循環に及ぼす影響を明らかにするために、本年度はまず倉橋島地先に実験海域を設定した。ここで海況要因、流況、水中懸濁物、プランクトンの現場観測をカキ養殖場の内外で8,10,1月に実施し、カキの餌となる懸濁粒子の量と質の分布と変動を明らかにした。その結果、カキ養殖により捕捉される植物プランクトン量をクロロフィルを指標として概ね定量化することができた。一方、場合によってはカキ養殖施設から粒状有機物が離脱することが分かり、有機物の収支は単純でないことが分かった。カキ養殖場付近における粒状物の鉛直フラックスを筏から0,10,40,100mの距離でセディメント・トラップを用いて定期的に実測したところ、筏から100m離れると沈降フラックスは明らかに減少することが明らかになった。今後、顕微鏡観察を含めて沈降物の性状を明らかにする計画である。次に、広島湾内カクマ地区と大黒神地区においてカキ養殖場内外の底質と底生生物を9月7,20日に調査し、比較した。その結果、底質中硫化物、有機態炭素・窒素は明らかに養殖場内で高く、底質の汚染が認められた。しかし、底質間の微生物群集組成からは、カキ養殖場はハマチの養殖場に比べて、硫酸塩還元細菌ならびに嫌気性細菌の優占率が低いことが明らかになった。
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