研究概要 |
イソガニリンパ液中のTTX(テトロドトキシン)結合性物質は,リンパ液を塩折してゲル濾過法で分画すると2つのピークが認められ,TTX結合活性は主に第1ピークで検出された。この画分はPAGEでRf値0.01の1本のバンドを,また免疫電気泳動法では抗イソガニリンパ液血清に対してβ領域に1本の沈降線を形成した。従ってTTX結合性物質は精製したと考えられる。そして,SDS-PAGEによって本物質は分子量約26〜113kDaの7つのサブユニットから成っていることが確認された。次に,ELISAによってリンパ液中の本物質を定量したところ,約0.5〜1.5mg/mlと測定された。なお,本物質は特に肝臓と腸でも検出された。イソガニリンパ液中のTTX結合性物質は,上記の結果から,いくつかのサブユニットからなる高分子の成分であり,リンパ液だけでなく臓器中にも分布するものと思われた。 フグ科魚類血漿中のTTX結合性物質の活性測定と精製とを行った。精製前の血漿中のTTX結合活性はコモンフグが最も高いため,主としてコモンフグの血漿を研究対象としたが,活性には個体差があり,また季節変動と思える変化も見られた。TTX結合活性はサキシトキシン(STX)の存在により著しくそこなわれた。TTX結合活性は分子量10万以上に見られた。活性物質を精製中であるが電気泳動的に1本のバンドになるまでに至っていない。フグ体内に麻痺性貝毒が存在するとの論文もみられるが,STXがTTXと競合的にTTX結合性物質と結合することは,STXとフグとの関係をあらためて示唆している。
|