研究概要 |
魚類ミオシンは畜肉のそれに比べて著しく不安定であるが、その性状が魚肉の貯蔵・加工に際して大きな問題となっている。そこで、コイ普通筋から温度馴化に伴って発現する、性状の異なったミオシン・アイソフォームを単離し、その一次構造を決定して比較するために、まずcDNAクローニング用のDNAプローブを作製することを試みた。 まず、市販のコイ(平均体重600g)を10,20,30℃の水槽で1ヶ月以上飼育し、温度馴化させた。これらコイから背側普通筋を採取し、高イオン強度下、Mg^2+ATPを加えて、ミオシンを抽出し、硫安分画で精製した。次に、この精製ミオシンを0.12M NaCl存在下、1/130量のα-キモトリプシンを加えて、10℃で30分間限定分解し、頭部サブフラグメント-1と尾部ロッドに切断した。ロッドについてはさらに、0.5M KCI存在下、再び1/130量のα-キモトリプシンを加えて、10℃で30分間限定分解し、L-メロミオシン(LMM)とサブフラグメント-2に切断した。さらに、LMMをSDS-PAGE後にナイロン膜に転写し、プロテインシーケンサに供試して、N末端アミノ酸配列を調べた。その結果、10℃馴化コイのLMMではRAKYETDAIQRTE、一方30℃馴化コイのLMMではRTKYETDAIQRTEELEEAKと決定された。したがって、10および30℃馴化コイのLMMではN末端から2番目のアミノ酸が異なることが明らかになった。 次に、常法より、10および30℃馴化コイの普通筋から、λファージをベクターとしてcDNAライブラリーを作製した。さらに、先に得られたLMMのN末端アミノ酸配列をもとにDNAプライマーを合成し、ライブラリーを鋳型としてPCRを行ったところ、約200bpのDNAフラグメントが得られた。DNAシーケンサに供して塩基配列を決定し、アミノ酸を演繹したところ、上述の配列と一致し、DNAプローブとして有効であることが明らかとなった。
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