日本の農業構造は1985年以降、昭和一桁世代の農業従事者のリタイアのもとで離農が多発する時代に入り、水田農業を中心として経営規模を拡大する経営体が増加しているものの、平坦部条件良好地域でも粗放利用耕地や耕作放棄地の拡大し、中山間部は自立的経営体の形成が望めずに耕作放棄が拡大している。このもとで農地移動は土地持ち非農家と借地型大規模経営との間で賃貸借形態で展開し、小作料は大規模経営体の他産業並賃金取得を前提とする剰余によって規定される段階になっているが、自立可能な大規模経営体の形成が十分ではなく、やむなく農業を継続する兼業農家や「集落営農」を形成する動きがみられる。 職業自由選択意識の普及は離農多発をもたらすとともに農業従事者個々の自立を前提とするパートナーシップ経営化を促しているが、こうした意識が短期間に普及したのは伝統的農家の零細性という背景がある。日本の農業構造転換の困難は、時代が要請する機械化農業経営と伝統農家の零細性とのギャップが余りに大きいという点にある。このギャップを埋める機械化農業の担い手経営体育成対策がとりわけ重要な課題になっている。併せて農地保全管理として離農・規模縮小世帯が放出する農地を集団化して担い手の利用に委ねる農地移動管理、地域による非農用地を含む土地利用管理、これらを総合的に実施していかねばならない。 以上の総合対策が有効に働く制度的枠組としては、土地利用計画制度の抜本的整備が不可欠であるが、そのもとで主に市町村自治体等の農地移動管理体制の整備、集落による土地利用管理体制の再整備が課題になる。集落農家集団による農地管理から、定住する多数の非農家を含む住民自治による土地管理体制に再編して、市町村の住民参加型土地利用計画を支える関係に展開していく必要がある。
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