体外成熟豚卵子の体外受精において大きな問題とされてきた、雄性前核形成不全と高頻度の多精受精の原因を解明し、正常な受精の得られる系を開発することを目的として研究を進め、つぎのような成績を得た。 1.未熟卵子の細胞質成熟におよぼす上皮成長因子(EGF)と性腺刺激ホルモン(GTH;10IU eCG/ml+10IU bCG/ml)の相乗効果について調べ、EGFとGTHはいずれも細胞質成熟を促進したが、この効果は卵丘細胞を介して発現されることを明らかにした。 2.さらに培養条件を検討するために、異なる培地で培養した未熟卵子の成熟におよぼす牛胎児血清(FCS)、豚卵胞液(PFF)およびGTHの影響について調べた。成熟培地としてTCM-199BおよびWhittenの修正培地(mWM)を用いて比較した結果、異なる培地においてGT、FCSおよびPFFは卵子の成熟それぞれ異なる影響をおよぼすことが示唆された。また、PFFおよびGTを添加したmWM(mWM-FG)にさらに20種類のアミノ酸を添加した結果、細胞質成熟はより促進されるとともに、受精時に卵丘細胞が存在することによって雄性前核形成の促進されることを明らかにした。 3.システイン(CT)の細胞質成熟促進効果についてはすでに知られているが、その効果の発現が卵子の成熟段階に依存していることを明らかにした。また、CTとシスチンの卵子による利用性が卵丘細胞の有無により異なることを示唆する結果を得た。 4.第一成熟分裂途上の未熟卵子への精子侵入能の変化と細胞質内に侵入した精子核の変化について調べ、第一成熟分裂途上の未熟卵子の細胞質が精子の中期像染色体を形成する強い活性を有することを見いだした。
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