研究概要 |
本研究の目標は,各家畜の体温調節特性を明らかにし,合理的な防暑技術の選択とその運用法を提示することである。本年度は体温調節特性について,その特性を体温の日リズムと調節レベルにあるととらえ,2つの実験を行ない,防暑技術と結び付けられる解釈を試みた。 実験1では,4頭の育成雌牛を用いて,日内を朝,昼,夕,夜に分け,各期の給飼を同一にし,常温(23℃)と高温(33℃,1日4時間)に感作し,体温調節性生理反応を調べ,体温に認められる日リズムの成因について調べた。実験2では育成雌牛を4頭用い,日内を昼と夜に2分し,環境温度を20℃の飼育条件から23,28,33,38℃に変え,それぞれ4時間ずつ昼(11〜15時)と夜(23〜3時)に感作し,この間の生理反応と起立時間を測定し,環境温度に対する感受性の昼・夜間差を検討した。両実験とも体熱平衡の成立した時間帯のデータを用いて検討した。 実験1では,膣温と平均体温には,朝〜昼期で低く,夕〜夜期で高くなる日内リズムが両環境温度下で認められ,高温下での上昇も明瞭であった。ここでは体温の日リズムと高温下での上昇が,いずれも産熱量に見合った放熱量を維持するために必要な反応であり,同じ量の放熱をするのに,夕〜夜期には朝〜昼期よりも,また,高温下では常温下よりも高い体温の設定が必要になると解釈した。また,なぜ必要になるのかについては,実験2の結果から,高温下での体温の上昇,呼吸数の増加,起立時間の延長などが,いずれも夜間の反応で顕著となり,この現象を生体には温度に対する感受性があると仮定して説明を試みた。すなわち,その感受性には日リズムがあり,感受性の低くなる夜間には体温を高くしなければ,同じ量の体熱を放散できないと考えるのである。 今回の結果と解釈は,環境管理を考えるために必要な知識を提供できるものと考えている。
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