研究概要 |
1.ニューロフィラメント(NF)欠損ウズラの本態について NF欠損ウズラの末梢神経線維における軸索と髄鞘の変化,およびその相関関係を調べた.無髄神経線維では,NF欠損を代償してマイクロチューブル(MT)数が増加しているようであった.有髄神経線維では,軸索の大きさが髄鞘層数の規定因子ではないと判断された.それ故,軸索及び軸索小器官がNF欠損のもとでどのように変化するかの検討には,髄鞘数(X軸)に対する軸索および軸索小器官のパラメーター(Y軸)の相関関係を解析することが有意義であると判断された.なお,大経有髄線維に比較して小経有髄線維にはNF欠損の影響は少ないと結論された. 次に,NFの欠損が三量体型GTP結合(G)白質に影響を及ぼすか否かを検討した.G蛋白質はNF欠損ウズラでは正常ウズラよりも増量していたが,これがNF欠損ウズラの振戦症状発現に関与しているか否かは明らかではない. 2.NF欠損ウズラに対する神経毒の影響 NF欠損ウズラに対して,神経毒であるアクリルアミドに続いてtri-ortho-cresyl-phosphate(TOCP)の影響を調べた.TOCPの連続投与は,正常ウズラの脊髄白質の神経路に遠位軸索症を引き起こしたが,NF欠損ウズラにはその変化は生じなかった.よってNFの存在がその病変発現に関与していることは明らかであった.一方,TOCPの正常およびNF欠損ウズラへの投与は,軸索終末変性を両者に引き起こし,この変性病変発現には,NFの存否は関係しないことが示された. 以上のように,NF欠損ウズラは極めて特徴的であり,疾患モデル動物としての意義も極めて高い.
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