研究概要 |
1.ニューロフィラメント(NF)欠損ウズラ(Quv)の本態について Quvの末梢神経線維における軸索と髄鞘の変化,およびその相関関係を調べた.無髄神経線維では,NF欠損を代償してマイクロチューブ(MT)数が増加しているようであった.有髄神経線維では,軸索の大きさが髄鞘層数の規定因子ではないと判断された. 次に,NFの神経線維再生への関与を調べた.このため,Quv坐骨神経を鉗子で押して砕き,2週間後にこれより末梢部位を形態学的に調べた.この結果,Quvでは正常対照例より再生神経線維が少なく,NF欠損はその再生を遅延させることが明らかとなった. さらに,NFの欠損が三量体型GTP結合(G)蛋白質に影響を及ぼすか否かを検討した.G蛋白質はQuvでは正常ウズラよりも増量していたが,これがQuvの振戦症状発現に関与しているか否かは明らかではない. 2.NF欠損ウズラ(Quv)に対する神経毒の影響 Quvに対して,神経毒であるアクリルアミドに続いてtri-ortho-cresyl-phosphate(TOCP)の影響を調べた.TOCPの連続投与は,正常ウズラの脊髄白質の神経路に遠位軸索症を引き起こしたが,Quvにはその変化は生じなかった.よってNFの存在がその病変発現に関与していることは明らかであった.一方,TOCPの正常およびQuvウズラへの投与は,軸索終末変性を両者に引き起こし,この変性病変発現には,NFの存否は関係しないことが示された. さらに,別の神経毒である2,5-hexanedioneを同様に投与した結果,正常ウズラには軸索腫大を誘発したが,Quvにはそれは生じなかった. 以上のように,NF欠損ウズラは極めて特徴的であり,疾患モデル動物としての意義も極めて高い.
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