研究概要 |
ウシの尿道周囲線複合体の分泌上皮を一般的な組織化学と標識レクチンを用いて組織化学的に検索した。ウシの尿道周囲線複合体は、尿道に独立に開口する多くの腺葉からなり、その位置的な関係から前立腺体部、前立腺伝播部及び尿道球腺に分けられた。組織化学的観察およびレクチンを用いた組織化学的観察により、性質の異なる三種類の腺房(漿液型腺房,粘液型腺房,非定型腺房)と六種類の分泌上皮細胞(I-a型,I-b型,II型,III型,IV型,V型)が確認された。これらの腺房と細胞はそれぞれ特徴的な分布をしめした。これらのことはウシの尿道周囲腺複合体のもつ分泌機能が非常に複雑なものであり、生殖機能に大きな役割を果たしていることを予想させた。 ウシの精巣において,各種実験動物で存在が報告されているペプチドを中心に免疫組織化学的に検索した。ウシの精巣には各種実験動物で存在が報告されているオキシトシン、substance P、GRPは認められなかったが,S-100蛋白,ビメンチンおよびインヒビンがセリトリ細胞に認められた。雄性ホルモン産生細胞であるライディヒ細胞では今回検索したいずれのペプチドおよび蛋白に対しても陽性反応は認められなかった。この中でも視床下部-下垂体-生殖腺系におけるフィードバック機構の存在で注目されているインヒビンに重点を置き胎仔から成熟種牛までの精巣で検索した結果,胎仔および新生子牛でセルトリ細胞に今日陽性反応が観察されたが,成長に伴って染色性が減弱し,6カ月以上のの子牛では陽性反応は認められなくなった。このセルトリ細胞におけるインヒビン陽性反応の消長と精子発生の抑制との関係が興味あるので,今後,インヒビンの免疫組織化学的陽性反応の消長のみならず,組織中のインヒビン濃度の測定,およびインヒビンのメッセンジャーRNAの発現の消長をin-situ RT PCR法で詳細に検討するべく,予備実験を実施中である。現在,ウシの尿道周囲腺複合体複合糖質について投稿準備中であり,既発表論文は無い。
|