研究概要 |
平成7年度の研究においてPRVのチミジンキナーゼ(TK)遺伝子を選択マーカーとする容易で効率の良いBHV-1組み換え体作製法を確立し、BHV-1のゲノムにPRVのgB,gC,gD,gE,gI遺伝子を組み込んだ組み換え体を作出した。これらの組み換えウイルスがPRVの遺伝子によってコードされる糖タンパクを発現していることは特異的なPRV抗体を用いた蛍光抗体法およびWestern blot法により確認した。BHV-1をハムスター細胞に感染させた場合、あまり増殖が見られず、最終タイタ-も比較的低いが、PRVgB遺伝子を組み込んだBHV-1においては5-10倍のタイタ-を示した。ハムスター細胞への吸着能に関してはBHV-1/PRVgB組み換え体と親ウイルスとの間に差は見られなかったが、ウイルスの細胞内へのpenetrationはPRVgBにより促進されているように思われた。 イヌヘルペスウイルス(CHV)はイヌ由来の細胞にのみ感染・増殖能を持つ極めて宿主特異性の高いウイルスであるが、このウイルスの遺伝子解析はあまり進んでいない。このウイルスの宿主特異性の研究をする上で組み換え体を作出する必要があり、そのためにCHVのTK遺伝子シ解析を行った。既知のネコヘルペスウイルス1型(FHV-1)のTK遺伝子をプローブとしてlow stringentな条件下でサザンプロット解析を行ったところ、0.6kbpと1.5kbp断片にFHV-1TK遺伝子と相同の遺伝子が存在することが示された。そこで、これらの断片の塩基配列を決定した結果、328アミノ酸をコードする984塩基よりなるCHVTKのORFが確認された。また、ノーザンプロット解析により1.5kbのCHVTK遺伝子の転写産物が認められた。次に、CHVゲノムのTK遺伝子領域にLacZ遺伝子を組み込んだ組み換え体を作製し、外来遺伝子の安定した発現を確認した。
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