研究概要 |
ウシヘルペスウイルス1型(BHV-1)はウシ由来のMDBK細胞では非常によく増殖するが、ハムスター由来のHmLu-1細胞に感染させてもあまり増殖がおこらない。本研究において、BHV-1は HmLu-1細胞に吸着、進入しimmediate early タンパクであるBICP4を発現する事を明らかにした。 HmLu-1細胞内で発現したBICP4はMDBK細胞における発現量に比較すると少量であり、遅れて発現した。BICP4の機能を検討するために、以下に述べるtransient CAT assayを行った。BHV-1のearly,lateおよびdelayed late 遺伝子のプロモータをcloramphenicol acetyl transferase(CAT)遺伝子のコーディング領域の上流に組み込んだプラスミドを構築し、それぞれのプラスミドをHmLu-1細胞にtransfectし、更にBHV-1を感染させてCAT活性を調べた。BHV-1感染によりearlyおよびlateプロモータは活性化されるがdelayed lateプロモータは活性化されないことが明らかになった。BICP4はpermissive細胞内でearlyおよびlateプロモータを活性化するが、以上の事実はnon-permissiveであるHmLu-1細胞内で発現しているBICP4が機能している事を示唆している。またdelayed lateプロモータを活性化させるためにはBICP4のみならずウイルスのDNAの複製が起こることが必須であることから、HmLu-1細胞内では機能を有するBICP4が合成されるが、DNA複製は抑制されている事が示唆される。 イヌヘルペウスウイルス(CHV)はイヌ由来の細胞にのみ感染・増殖能を持つ極めて宿主特異性の高いウイルスである。平成8年度の研究において、CHVのゲノムにDNAを組み込む技術を開発した。この技術を用いて、CHVのチミジンキナーゼ遺伝子座に宿主域の広いPRVの糖タンパク遺伝子を組み込んだ組み換え体を作出した。この組み換えウイルスにおける宿主域の変化についての研究が現在進行中である。
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