ダニ脳炎患者発生地区および道内において疫学調査を実施するとともに、分離されたダニ脳炎ウイルスの性状を解析した。 1.ダニからのウイルス分離 1996年の4月と5月に、患者発生地区において植生上から旗ずり法にて採集したヤマトマダニのメス300匹、オス300匹をウイルス分離に供したところ、2株のダニ脳炎ウイルスが分離された。この成績から患者発生地区においてはヤマトダニが媒介種と推定され、さらにウイルスのマダニにおける最小感染率は0.33% (2/600)と計算された。 2.ノネズミにおける抗体調査とウイルス分離 1995年6月と10月に患者発生地区においてノネズミを捕獲し抗体調査を実施するとともに、ウイルス分離を実施した。抗体陽性率が6月では2.2% (1/45)であり、10月には18.2% (8/44)と有意に増加したことから、本地区でノネズミの間に夏から秋にかけてウイルスの伝播が活発に起こっていることが判明した。また10月に採集したアカネズミから1株のダニ脳炎ウイルスが分離された。 3.ウイルスの性状解析 分離されたウイルスは単クローン性抗体による解析と核酸塩基配列の解析からロシア春夏脳炎ウイルスであることが確認された。 4.汚染地の特定 イヌおよびノネズミの抗体調査の結果汚染地は患者発生地区周辺および道内各地に拡大していることが判明した。
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