ダニ脳炎患者発生地区および北海道各地において疫学調査を実施した。 1.患者発生地区における疫学調査成績 ダニ脳炎ウイルスの病原巣動物を推定するため、野ネズミの抗体調査とウイルス分離を実施した。1995年に捕獲した野ネズミ44匹中7匹(15.9%)および1996年の125匹中14匹(11.2%)にダニ脳炎ウイルス抗体陽性例を確認した。1995年のエゾアカネズミ11匹中1匹および1996年のエゾヤチネズミ79匹中1匹から計2株のウイルスが分離された。分離されたウイルスは単クローン性抗体を用いた蛍光抗体法によりダニ脳炎ウイルスと同定された。 また患者の発生した上磯町の8地点で野ネズミの抗体調査を実施したところ、患者発生地区以外の3地点で抗体陽性例が発見された。このことからダニ脳炎ウイルスは上磯町に広く分布していることが判明した。 2.北海道各地における調査成績 北海道の各支庁からウマの血清およびイヌの血清を集め血清疫学調査を実施した。ウマ血清は1992年に1支庁50例ずつ14支庁から計700検体を集めたものを対象とした。イヌ血清は8支庁から1994年から1997年に集めた193検体を用いた。ウマ血清では檜山支庁で50例中2例、後志支庁で50例中1例がダニ脳炎ウイルス抗体を保有していた。イヌ血清では、患者発生のあった渡島支庁の21例中16例、胆振支庁の16例中2例がダニ脳炎抗体陽性であった。このことからダニ脳炎ウイルス流行地区は北海道の南部に広範に分布していることが判明した。
|