研究概要 |
平成7年度は,多くの動物種について材料収集と病理組織検索が予定に従い行われた.特に病理学的検索により,これまでβアミロイド症の発生が知られていなかったネコや偶蹄類のラクダの脳にも加齢により老人斑や脳血管アミロイド症等のβアミロイド症が発生することを初めて明らかにした.さらにクマではこれまで調べられた種ではシロクマにしかβアミロイド症の発生は知られていなかったが,アメリカクロクマにおいても重得なβアミロイド症が発生し,加えて重度のポリグルコサン小体沈着や淡蒼球の石灰沈着など,ヒトの脳で見られる様々な加齢性病変が形成されることを明らかにした.これらの知見についてはすでに海外の学術雑誌に公表している.これらの検索結果より,βアミロイド症の病態は動物種によりかなり異なっていることが明らかになり,この相違には何らかの要因(APPの構造的異差やβタンパク合成過程など)が関与するものと考えられる.以上のように平成7年度は,病理組織材料の収集について当初の計画以上に成果が挙げられたと考える.しかしながら収集材料の多くが,ホルマリン液で固定した材料であったり,比較的死後時間の経過したものなど,平成8年度以降の生化学的検索や分子生物学的検索に適しないものが多かった.現状としては,ウシ,ブタ,ネコ,イヌ,ネコ,一般齧歯類の新鮮組織の入手については事足りているが,平成7年度の検索結果を考えると,より多種の動物種(クマ,ラクダなど)についても新鮮材料を入手する方策を採っていく必要性がある.従って,平成8年度は,当初の実験計画に加え,引き続き材料採取を関係各機関の協力を得て行う予定とした
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