平成8年は、アミロイドβタンパクの検索と同時に、βアミロイド症の発症に重要な役割を担っていると予想されるアポリポタンパクEの形態学的・生化学的検索も行われ、一定の成果が得られた。本研究の成果は、すでに海外の学術雑誌に投稿し、受理された。APPの検索については、分子生物学的検討のため、自動PCR装置を購入し、セットアップが完了した。現在、APPのN末端に対するプライマーの選択を行っている。平成9年まで本研究は継続するため、現在APPのPCR条件を検討中である。また、平成8年度は、平成7年度からの継続である各種動物の脳の形態学的な研究が行われたが、前年度ラクダ、ネコで発見された様な、脳におけるβアミロイドのち沈着する動物種を新たに発見することはできなかった。おそらく、加齢により脳にβアミロイドが沈着する動物種は、ヒト、サル、クマ、イヌ、コヨ-テ、ネコ、およびラクダに限られているものと考えられる。特にラクダに関しては、唯一の草食動物であり、他動物とは、様々な面で代謝系が異なっていると思われるが、APPの構造やアミロイドβタンパクの産生に重要な役割を担っているアポリポタンパクEの構造が類似している可能性がある。この点は平成9年度さらに詳細に検討する必要があると思われる。
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