研究概要 |
生態調和型農業生産システムを確立することを目的として,1.5haの畑圃場に〔耕起の有無〕,〔化学肥料または堆厩肥の施用〕および〔農薬散布の有無〕の3処理を組み合わせた試験区を設定し,生産技術体系のあり方を,作物の生育と収量,土壌の理化学性,土壌肥沃度,作物病害虫などの角度から検討した(継続中). 耕起処理は,確かに耕耘部位を膨軟にしたが,作物の生育・収量の点では不耕起区と大差なかった.不耕起は省力的ではあるものの,明らかに地表に作物残渣が多く残り,播種の精度が低下した. 化学肥料または堆厩肥の施用は作物の生育・収量に明らかに影響した.その様相は作物の種類によって異なり,イネ科作物では化学肥料と堆厩肥の併用区で生育・収量が良好であったが,ダイズでは堆厩肥単用区で収量が最大になった.初期生育確保のための即効性と生育後期のための緩効性を保証することが要点であることが明らかになった.雑草繁茂量は化学肥料区で多くなること,および化学肥料区よりも堆厩肥区で窒素の溶脱量が多くなることは注目に値する.また,堆厩肥区の土壌微生物バイオマス窒素は明らかに多くなっていた. 農薬として殺虫剤と除草剤を使用したが,これらの効果は化学肥料区と堆厩肥区で異なった.化学肥料区では雑草の生育も促進されるため,除草剤施用による雑草害防止効果はとくに顕著であった. 以上のように,生産技術体系として各処理の組み合わせを検討した結果,不耕起(減耕耘)-堆厩肥-無農薬(減農薬)の組み合わせでも作物の収量には大きな影響はないと考えられた.しかし,播種精度や除草作業などの点が解決されなければ,こうした技術体系の実用化は現実的に難しいと結論された.今後,これらの点に関しても研究を進める予定である.
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