スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)遺伝子の発現調節機構を解明し、環境ストレス耐性植物を育種する事を目的として研究を進めた。その結果、同一植物(イネ)についての各種(SOD)発現応答を全体的に把握することが可能となった。さらに、SODと共役して活性酸素消去に関わる酵素の遺伝子単離と構造解析も進めた。 本年度の研究の結果、イネ・プラスチド型Cu/Zn-SODのcDNA構造を明らかにし、発現機構の調査を行った。単子葉植物について特にトウモロコシからプラスチド型SOD遺伝子の単離が米国で長年試みられてきたが成功しておらず、その発現機構も明らかではない。本研究により、単子葉植物のプラスチド型Cu/ZnのcDNA構造と、その発現機構の一部が初めて明らかとなった。単子葉植物のプラスチド型SODの発現は光により非常に厳密に制御されており、mRNAは光処理直後の極く限られた時期にのみ発現している。そのため、単離がこれまで困難であったと思われる。イネ・全SOD分子種のセットが揃い、さらに本年度はアスコルビン酸パーオキシダーゼ(APX)、グルタチオン還元酵素(GR)の遺伝子単離・構造解析も終了した。酸素ストレスに対するSOD分子種間、および、他の活性酸素消去系酵素との間での協調的応答の全体像の理解が今後、可能となる。
|