研究概要 |
本研究の目的は,作物個葉光合成を化学エネルギーの生産(光化学系)と消費(炭酸固定系)の相互関係から炭酸固定作用の調節機構を解明することである.(1)マングビーン個葉を実験材料に用いて,異なる光強度,CO_2濃度およびO_2濃度条件下における間欠照射(間欠照射,明暗20秒間隔)下のCER(ガス交換速度)の経時的変化を測定した.明期において余剰するエネルギー量および暗期の炭酸固定量を算出し,間欠照射下におけるRuBisco(RuBPカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ)活性特性を検討した.強光下では間欠照射によるCERの上昇が明らかであり,これは明期中の余剰エネルギーによって光遮断下でも炭酸固定反応が進むためと考えられた.RuBiscoの光活性化現象やオキシゲナーゼとカルボキシラーゼの相対活性は,CO_2濃度およびO_2濃度条件で変化し,これが間欠照射下のCERや光利用効率に影響することが確認された.(2)次に,光化学系と炭酸固定系間の作用バランスを明確にするため,個葉のガス代謝速度とクロロフィル蛍光消光反応について解析した.既成の機器を改良して組み合わせ,ガス交換速度と蛍光消光の同時測定を行った.光強度,炭酸ガス濃度,酸素濃度,温度を種々に変えた条件下でマングビーン個葉のガス交換速度とクロロフィル蛍光消光を測定し,両者の環境条件に対する反応特性から,光化学系と炭酸固定系の作用バランスについて解析した.各環境下における光合成や最適光合成効率には,光呼吸によるエネルギー消費が密接に関係することが確認された.
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