研究概要 |
本研究の目的は乾燥地における高地下水位下での土壌塩類集積機構を解明することである.塩類集積に影響を及ぼす要因として土壌の理化学性,地下水位,および植生をとりあげ,それらを組み合わせたモデル実験を行った.理化学性が大きく異なる鳥取砂丘土,マサ土,造成土,および赤黄色土を供試し,それらを詰めた50cm高のポットの地下水位を15〜35cmに設定し,ダイズ,キャベツ,あるいはトウモロコシを栽培した.調査の対象とした塩類は施与した肥料塩と地下水中の塩化ナトリウムである. 砂丘土のように粘土含有率が低い土壌では地下水位が土壌水分プロフィールおよび蒸発散に及ぼす影響が大きく,地下水位が30cm以上では表層土壌は乾燥した.逆に地下水位が高いと蒸発散が多く,それにともなって塩類の移動量も多いはずであるが,土壌表層に塩類が集積することはなかった.植物栽培によって水消費が増しても集積は認められなかった.これは陽イオン交換容量が小さいために塩類が保持されることなく,拡散するための現象と考えられた.土壌の粘土含有率および陽イオン交換容量が高くなるにつれて土壌表層への塩類集積が多くなることがこれを裏付けた.前述のように砂丘土では地下水位が30cm以上になると地下水から表層への水供給が不十分で塩類集積も起こらないが,植物の生育も不良となる.ただし植物の根系分布特性によって異なる結果が得られる可能性はある。 理化学性が砂丘土と対極にある赤黄色土では今回の条件では地下水位および植物栽培が土壌水分プロフィールに及ぼす影響は小さかったが,植物栽培による水消費量の増加によって塩類集積が引き起こされた.さらに地下水中のNa_+の表層への移動および土壌中の分布は陽イオンとの交換速度の影響が大きいことが示された。 化学性が砂丘土と赤黄色土の間に位置するマサ土と造成土では塩類集積に関してもその中間に位置することが示された。
|