木材腐朽担子菌類の生産するシュウ酸は金属キレーター、酸触媒活性、および電子供給源として利用し、木材生分解において重要な役割を果たしていることが解明されつつある。しかし、そき生合成に関与する酵素系の性質については、ほとんど解明されていない。本年度の研究実績の概要は以下のようにまとめられる。 ・オオウズラタケとカワラタケについて、グリオキシレート酸化酵素の生産性について検討したところ、オオウズラタケの方が後者より30倍の活性を有していた。オオウズラタケから得られた酵素は、約80倍に精製された。阻害剤に対する活性変化から活性中心には、フラビン類縁体物質が含まれていることが推定された。 ・カワラタケの酵素はかなり不安定であるが、一応、精製する過程で、3つのアイソザイムが存在することが明らかとなった。 ・カワラタケには、シュウ酸分解生成物であるギ酸の脱水素酵素が存在することが木材腐朽菌では初めて証明された。従って、グリオキシル酸→シュウ酸→ギ酸→CO_2の代謝経路が明確となった。 ・リグニン分解酵素との関連で、LCCモデル化合物によってシュウ酸が高効率で分解されることも新知見として得られた。
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