本研究は平成7年10月の補正予算によって予算措置がなされたので時間的に窮屈であったが、セルロースの様々な性質のなかのうち特にヘミセルロースや水との相互作用を考える上で極めて重要な手がかりが得られたと考えられる。数多くのセルロースの電子顕微鏡観察や電子回折により、セルロースの基本構造であるミクロフィブリルが基本的にねじれた構造であり、不安定型のI_2型が面配向し易いのは捻れがあまり大きくないためで安定型のセルロースといわれるI_β型の方が大きいことなどが明らかになった。つまりI_α型のセルロースがエネルギー的に不安定なのは本来捻れやすい構造をリボン状に成形しために生ずるひずみが原因と考えられる。 この捻れは乾燥によりさらにはげしくなり、セルロース材料の諸性質を調べる上で極めて興味深い。 次に興味深い点はセルロースの酵素分解過程を経時的に追跡することで、セルロースの分解過程を調べることである。現在のところ予備実験までしか到達できていないが、酵素分解の反応と形態の変化を直接結びつけて考えられるだけでなく、セルロースそのものの構造やその非晶化のプロセスを明らかにでき、あたらしいミクロフィブリルのモデルを構築する可能性が生じてきた。
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