研究概要 |
本研究では伴侶動物としての犬の臓器移植法の確立を目的として実験を行い、下記の結果を得た。 1)FK506は0.05mg/kg以上の筋肉内投与量により末梢血単核球のリンパ球混合反応での反応を抑制し,さらにリンパ球混合反応培養上清中へのIL-1,IL-2,TNFの産生を抑制した。2)非組織適合犬間で皮膚移植を実施した犬にFK506(0.2ml/kg/day)を連日投与した。その結果、末梢血中単球分画は有意に減少した。また、CD4+細胞、CD8+細胞の細胞数に影響しないが、IgG+細胞の増加抑制傾向を示した。conAに対する末梢血リンパ球の増殖能増強効果を抑制した。以上からFK506はイヌの皮膚移植において急性拒絶反応の主体であるリンパ球、CD4+細胞、CDB+細胞の活性化と増殖能を抑制し、移植皮膚片へのこれらの細胞の浸潤を抑制し、拒絶反応を制御するのに有効であることが示唆された。3)組織不適合犬間の腎移植時におけるFK506の拒絶反応抑制効果について検索した。その結果、FK506は0.2mg/kg筋肉内投与では拒絶反応を抑制する傾向を認めたが、完全な拒絶反応の抑制には至らなかった。4)各種の腎機能障害犬の片腎の腎機能検査値(クレアチニンクリアランスおよび腎血流量)とdynamic CT検査によるパラメータ値と比較検討した。その結果、Dynamic CT検査から得られる皮質髄質交差時間(CMT)と皮質曲線の下がり勾配がクレアチニンクリアランスおよび腎血流量と相関を示した。また、これらのパラメータは初期の腎機能障害をも評価できることが判明した。5)末期腎不全犬症例に腎移植を実施したが、術後約1ケ月で死亡した。移植腎には病理組織学的な拒絶反応所見は認められなかったが、胸膜炎および心膜炎を認めた。その結果、臨床例における腎移植時には、移植時期の選択または移植前の病態管理が重要であることが示唆された。
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