本年度はB. microti感染マウスにおける免疫防御および免疫病理発症にかかわるT細胞サブセットとサイトカイン産生の機序を、動物モデルを用いたin vivo実験系ならびにin vitro培養系を用いて明らかにすることを目的とした。その結果、免疫正常マウスはBm原虫感染に自然耐過するが、SCIDマウスでは原虫を排除できないものの正常T細胞を移入することによって感染耐過するようになる。またIL-2、IL-4およびIL-6などのサイトカインならびに抗サイトカインの投与は、感染のプロフィルには大きな影響は与えなかった。さらにCD4欠損ノックアウトマウスや抗CD4処理マウスでは原虫の排除は見られないが、CD8欠損ノックアウトマウスや抗CD8処理マウスでは感染耐過することから、免疫防御にはCD4T細胞のみが役割を果していることが明らかとなった。免疫マウスからBm特異的T細胞クローンを樹立したところ、すべてCD4陽性であった。これらクローンをin vitroにおいてBm抗原で刺激したところ多量のIFN-gの産生が認められた。これらからCD4陽性T細胞の産生するIFN-γが感染防御に重要であることが示唆された。in vivoでは原虫排除後の血清中に多量のIFN-γが証明されたが、急性期にはほとんど存在しなかった。このことは他の赤血球寄生原虫に見られない特徴であり、IFN-γはBmの排除そのものではなく、再燃を阻止するのに必要であることを示している。また、in vivoでのIFN-γ低産生には他の因子による抑制作用の存在が考えられる。
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