B.microtiは野ネズミを自然宿主とし、マダニの吸血によって媒介されてヒトへ伝播する人獣共通原虫感染症の病原体である。本症は欧米では免疫低下宿主を中心に死亡例を含む多数の症例があり注目されているが、わが国ではヒトの感染例は確認されていない。しかし国内の野ネズミに本原虫が検出されていること、およびダニ媒介性感染症が増加していることから本症についても新しい人畜共通伝染病として警戒する必要がある。 本研究では本原虫に対する免疫防御にかかわるT細胞サブセットを明らかにし、次いで特異CD4陽性T細胞クローンを樹立してその感染防御作用を免疫不全宿主に対する移入実験によって明らかにすることを目的とした。さらに得られた成績をもとに血清疫学的手法によってわが国における本原虫の存否を明らかにすることを目的とした。 正常およびSCIDマウスなどを用いて感染後のサイトカインならびにT細胞サブセットの動態を明らかにし、特異的不細胞クローンを樹立した。その結果、感染防御にはCD4陽性T細胞が必須であるが、CD8陽性T細胞は全く役割を果たしていないことが明らかとなった。サイトカインとしてはTh1タイプのサイトカインが重要であることが明らかになった。 樹立したT細胞クローンはすべてCD4陽性で、種々のレベルでIFNを産生することが明らかとなった。これら細胞をSCIDマウスに受け身移入した後原虫攻撃を行うことによって各クローンの感染防御能を測定したところ、CD4T細胞が本原虫感染に対して防御能を担っていることが初めて直接的に証明された。 野外マウスの抗体をウエスタンブロッティング法によって調べた結果、被検血清の中に約30-100kDaの抗原を認識するものが見いだされ、わが国にもB.microtiが存在することを示唆された。
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