研究概要 |
1.光合成器官の高温感受性の品種間差異:高気温前処理による高温耐性増大程度(高温順化の程度)を調べた.48℃×10分の高温遭遇後の葉の相対クロロフィル蛍光(高温遭遇前のFv/Fmに対する遭遇後の同値の比率)と正味および総光合成速度は,高温順化した植物が非順化の植物より大きかった.高温順化によって,葉のABA濃度が高まり糖濃度が低下した.クロロプラストのタンパク組成は変化しなかったが,葉の全可溶性タンパクには高温順化によって含量比が増大するものが幾つか存在した.また,高温順化程度にかなり大きな品種間差異が認められたが,その機作は明らかにできなかった. 2.生長速度に基づく高温障害に対する高温順化効果の品種間差異:生長速度を指標にした高温障害に対する高温順化の影響を調べた.高温順化によって高気温(48℃×5時間)による生長抑制が顕著に軽減された.この程度には品種差異が認められた.高温順化によって葉のABA濃度が増大し,ポリアミン濃度が低下したが,これらの変化程度の品種間差異は小さかった. 3.高地温による生育阻害におけるサイトカイニンの関与:根および葉のサイトカイニン濃度に及ぼす地温の影響を調べた.35℃,38℃の高地温によって根と葉のサイトカイニン濃度が著しく低下した.そこで,葉にBAPを葉面散布したところ,高地温による生育抑制が顕著に軽減された.以上から,高地温による生育抑制に根のサイトカイニン合成が直接関与していることが示唆された. 4.根の細胞膜の熱安定性の品種間差異:根の細胞膜の熱安定性とそれに対する高温順化効果の品種間差異をイオン漏出テストによって調べた.細胞膜が熱障害を受ける温度は,地温25℃で生育した根より32℃で生育し根の方が有意に大きかったが,根の細胞膜の耐熱温度の品種間差異は大きくなかった.
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