研究概要 |
我々が以前発見したAgrobacterium tumefaciensの染色体上にある新病原性遺伝子acvBの他の細菌における分布を調べた。acvBは、調べた全てのAgrobacterium菌に分布していた。octopine type T-plasmidを保有するAgrobacterium菌では染色体上にacvB遺伝子が存在し、その他にTi-plasmid上にacvBのhomolog(virJ)が存在していた。virJも機能していることは遺伝子破壊実験で明かになった。一方、nopaline type Ti-plasmidを保有しているAgrobacterium菌ではacvB遺伝子が染色体上にだけ存在し、virJは、Ti-plasmid上に存在しなかった。acvBとvirJをもつAgrobacteriumではacvB蛋白質が生合成され、ペリプラズムに局在していた。acvB遺伝子はRhizobium phaseoli, Rhizobium meliroti, Pseudomonas fluorescens, Bacillus subtilisには存在していなかった。acvB遺伝子の上記のような細菌間の分布は、acvB遺伝子はAgrobacterium菌に特有な機能、すなわち原核細胞から植物(真核)細胞へのDNAの転移に関与していることを強く示唆した。 GUS reporter遺伝子中にintronを挿入したbinary vectorを使い、非病原性変異株(B119菌、acvB^-)からタバコ培養細胞(BY2)へのT-DNAの転移を調べた。acvB(B119菌)では親株(A208株)に比べてT-DNAの宿主植物細胞への転移が阻害されていた。Acetosyringone(inducer)で処理したA208株のペリプラズムには、T-strandとACVB蛋白質の複合体が形成されていた。これに対し、B119株ではこのような複合体は、形成されなかった。T-strandをACVB蛋白質と複合体を形成させるとトマトのプロトプラストに効率よく取り込まれた。 上記の結果を基に、acvB遺伝子の産物であるACVB蛋白質は、ペリプラズムに局在し、T-strandと複合体を形成し、T-strandの宿主植物細胞への転移を仲介していると推定した。
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