我々が発見したAgrobacterium tumefaciensの染色体上にある新病原遺伝子(acvB)の機能解析を行った。acvB^-変異株(B-119株菌)を宿主細胞に接種した時に、T-complexの生成のステップまでは正常に進行している。従って、Acv Bタンパク質は(1)T-complexがA.tumefaciensから宿主細胞の細胞質に入るまでの過程、(2)T-complexが宿主細胞の細胞質から核へ移行する過程、(3)T-commplex(T-DNA)が宿主植物の染色体に組み込まれる過程の3つの過程の内のいづれかに関与しているはずである。この点についての情報を得るために、タバコ培養細胞を用いた以下の3つの実験系で、T-DNAの核への移行をレポーター遺伝子(gus遺伝子)の一過性発現で調べた。 (1)gus遺伝子DNA断片(3.1kb)をポリエチレングリコール(PEG)共存下でタバコBY2細胞とacvB遺伝子を導入し、acvB遺伝子を発現している形質転換タバコ細胞(acvB-BY2)細胞のプロトプラストにtransfectionする。 (2)gus遺伝子中にイントロンを挿入して、A.tumefaciens中では発現せず、タバコ細胞中だけで発現するように改変したgus遺伝子(intron-gus)をもつバイナリーベクター(pIG121)をA.tumefaciens A208菌(acvB^+)とB-119菌(acvB)に導入し、これらの菌をタバコBY2およびacvB-BY2細胞へ接種する。 (3)(2)で用いたA.tumefaciens2菌株を、タバコBY2およびタバコacvB-BY2細胞のプロトプラストへ接種する。 上記の実験結果より、AcvBの上記の3つの可能性のうちの第1番目の可能性、すなわち、T-complexが宿主細胞の細胞壁を通過して、宿主細胞の細胞質に入る過程に関与していることがわかった。
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