研究概要 |
細胞膜の糖輸送体のなかで,GLUT1とGLUT5に注目し,その上皮細胞における局在機構を追求した.グルコース輸送体GLUT1は,腎臓尿細管上皮細胞では基底側壁部に局在した.一方で,フルクトース輸送体GLUT5は,小腸吸収上皮細胞の頂部細胞膜に局在した.異なるアイソフォームで輸送体が,このような極性を持った上皮細胞で異なるドメインに局在するのは,糖の吸収,利用のために不可欠である.この機構を分子形態学レベルで解明するために,これらのcDNAを培養上皮細胞で発現させ,その局在を蛍光抗体法と免疫電顕法により追跡した.ヒト大腸癌由来の上皮細胞のCaco-2細胞でGLUT1を発現させると,基底側壁部に局在した.一方でGLUT5を発現させると頂部細胞膜に局在した.この結果は,Caco-2細胞でのGLUT5とGLUT1の局在を規定する情報は,それぞれの分子自身が保持しているのを示している.そこで,これらの分子のなかのどの部位が,糖輸送体の頂部と基底側壁部へのターゲッティングを規定しているかを,GLUT1とGLUT5のキメラ遺伝子を作製し,それをCaco-2細胞で発現させてその局在をみることにより解析した.その結果6番目と7番目の細胞膜貫通部をつなぐ細胞質側の部位が重要なのが示された.そこでGLUT5のこの部位のみをGLUT1に置き換えたキメラについて検索したところ,このGLUT5/GLUT1/GLUT5キメラ蛋白は基底側壁部に局在した.したがって,この細胞質側の部位が糖輸送体の頂部と基底側壁部へのタ-テッタィングに重要な役割を果たしていると考えられる。
|