研究概要 |
血液-組織関門をなす上皮や内皮においては、糖輸送体GLUT1が多量に存在し糖の関門通過に関与する。二層の上皮が関門をなす場合は、さらにギャップ結合蛋白のコネキシン26や43が重要な役割を果たす。ラット胎盤関門においてはGLUT1に加えてGLUT3も発現していた。免疫染色によりGLUT3は関門をなす二層の合胞体細胞層の母体血側の細胞膜に局在した。GLUT1やコネキシン26の局在と総合すると、このようなGLUT3の局在様式は、糖の胎仔への安定供給に寄与していると推定された。次に血液-組織関門の構造的基盤をなす閉鎖帯の分子構築について蛍光抗体法ならびに免疫電顕法で検討を加えた。マウスの眼球においては、オクルジンは網膜色素上皮、網膜血管の内皮、毛様体のnon-pigmented epithelial cells において細胞間に陽性であった。GLUT1とこれらの蛋白との多重標識観察により、GLUT1の発現とオクルジンの局在がきわめて良く一致することが判明した。一方ゾヌラオクル-デンス-1(ZO-1)はこれらの部位に加えて、網膜の外境界膜が陽性であった。これはミュラー細胞のジャンクションと推定される。7H6抗原については現在染色条件等を検討中である。以上の結果から,GLUT1強陽性の上皮や内皮においてはオクルジンやZO-1が存在し、血液-組織関門における非特異的な物質の移動を妨げると同時に糖を選択的に通過させていのが判明した。これらの研究成果をまとめ「血液-組織関門」における糖輸送機構としてIntl Rev Cyto1誌上で選択的関門通過機構のモデルを提唱した。
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