ニワトリ及びウシ網膜色素上皮(RPF)細胞を抗原としてマウスを免疫し、得られた単クローン抗体(S5D8、RPE)を用いて、それらの抗原蛋白質の分子細胞学的性格を解析した。 1):S5D8抗原蛋白質は63kDaの分子量、cDNA全長は2510bp、open reading frameは1599bp、polyadenylation siteは2カ所、アミノ酸残基数は533、glycosylationは3カ所あった。Signal peptideは存在せず、膜貫通部位も存在しなかった。メッセンジャーRNAのサイズは約2.9kbであった。線維芽細胞にopen reading frameをtransfectし、発現した蛋白質は抗SSD8抗体で染色され、その局材はRPE同様に、小胞体であった。S5D8蛋白質は動物種を越え網膜色素上皮に出現する蛋白質として、その機能が注目される。 2):抗体RPE7抗体の認識する蛋白質RPE7はRPE細胞のみならず、ミューラー細胞にも存在し、網膜における支持機能への関与が予想された。RPE7は分子量40〜45kDa、cDNAクローンには271個のアミノ酸残基からなるopen reading frameを含み、糖鎖結合部位を3か所にもつ、膜貫通型蛋白質であることが判明した。ホモロジー検索の結果、RPE7はimmunoglobulin superfamilyに属する新しい蛋白質であった。この蛋白質群に属するもののうち、EMMPRINは細胞外基質のリモデリングにも関与するといわれる。そこで、ウシRPE培養系をもちいて、その上清中のメタロプロテアーゼ活性を調べたところ、培養上清中にはgelatinaseAの活性が認められ、培養液中に抗RPE抗体を添加すると、その活性が増強されること示された。従って、RPE7は網膜において、外節処理機構やRPEの病的状態における移動に関与することが示唆された。
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