研究概要 |
本研究の目的はCREB転写調節蛋白およびRNAポリメラーゼなどのDNA結合蛋白がいかにDNAを認識し、結合するかをイメージングすることである。これまでDNAとDNA結合蛋白との結合はゲルシフトで予測していたため、結合過程でいかなる形態変化が起こるかは不明であった。そこで、我々は純化したDNAとDNA結合蛋白を反応させ噴霧法によりマイカ劈解面上に展開し、改良した低温低角度回転蒸着法により観察した。この方法により現在はDNAラセン構造の1/2ピッチ(5塩基対)を一つの単位として再現良く観察できるばかりでなく、蒸着量が最適の時は塩基対も観察できた。本研究においてCREBとソマトスタチン遺伝子プロモーター部のCRE領域との結合様式を立体的に明らかにした。すなわち、CREBは二量体として機能するが、ロイシンジッパー部分を向き合うように二量体が形成される。これら二量体によって形成されるクレバスの間にDNAを挟み転写因子としての機能を果たすことになる。さらに、大腸菌RNAポリメラーゼの構造とミュータントDNA(UV5)との結合にはじまる転写過程の構造解析を試みた。大腸菌のRNAポリメラーゼは四つの大きなドメインからなることを明らかにした。既に生化学的にRNAポリメラーゼはβ,β′αα,σの各サブユニットからなることおよびそれらの分子量が明らかであるので、それらを指針にして低温低角度回転蒸着法で得られたドメイン構造を同定した。RNAポリメラーゼには二つのチャンネルがあるが、ひとつはββ′と2αの間にある大きなチャンネルであり、もうひとつはβとβ′との間にスリット状に存在するものである。DNAと結合させたのち、観察するとα,β間の大きなチャンネルにDNAが入り込むので、もう一つのチャンネルはmRNAの出てくるところと結論ずけられる。
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