平成7年度は、主に透過型電子顕微鏡によるラット海馬采グリア複合体の生後発達について観察を進め、以下の新知見を得た。 1.電子顕微鏡レベルでグリア細胞のアポトーシスを同定した。海馬采におけるグリア細胞のアポトーシスをin vivoで確認した意義は大きい。これによって、グリア細胞列が細胞分裂とアポトーシスとを繰り返しながら形成されることがより強く裏付けられた。 2.生後2週間から4週間におけるグリア細胞列のheterogeneityをMori&Leblondの分類により記載した。この結果から、各グリア細胞列がほぼ独立してoligodendrocyteを連続的に成熟させていく発達様式が示唆された。 平成8年度は、上記の研究を発展させ、免疫組織化学的二重染色を施行することで、astrocyteのアポトーシスを確認し、共焦点型レーザー顕微鏡で得られた画像をコンピュータを用いて3次元的に解析した。また、走査型電子顕微鏡による観察を行い、成体ラット海馬采において、astrocyteの突起がoligodendrocyteの細胞体や突起を覆い包むグリア間相互関係を認めた。さらに、軸索およびグリア突起からなる織物様構造が走査電顕上で観察され、大脳白質の理論的再構築像を裏づけた。ヒト部検脳を用いたグリア複合体の比較解剖学的研究については、2例の正常対照群より海馬および海馬采を剖出し、光学顕微鏡および透過型電子顕微鏡を用いて観察した。固定条件のため微細構造の保存は不十分であったが、ラットと同様に神経軸索間隙に数珠状のグリア細胞配列を認めた。
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