研究概要 |
侵害的なガス環境(低O_2、高CO_2)要素と、侵害受容器であるポリモーダル受容器入力による反射性の呼吸系ネガティブフィードバックの相互作用について検討した。呼吸系に最も直接的に作用するO_2、CO_2濃度を各々高低2つのレベルに変化させたガス環境下で、麻酔下、人工呼吸下のネコを用いて実験を行った。呼吸出力(ピーク値と呼吸頻度の積)の指標として横隔神経放電を記録し、ガス環境変化の指標として、呼気O_2、CO_2濃度と動脈血pH、O_2、CO_2分圧を経時的に測定した。定常状態においては動脈血CO_2分圧は、呼気CO_2分圧と良く相関した(r=0.968,n=58)が、再呼吸のような急激なCO_2変化時においては両者間にズレが見られた。呼吸出力のCO_2レスポンスカーブ(再呼吸法を使用)の変曲点から個体毎の基準呼吸出力を便宜的に決めた。この基準値の約2倍の呼吸出力を生じるガス環境、高CO_2(呼気CO_2:4.6±0.3%から6.0±0.2%に上昇,n=10)、低O_2(呼気O_2:20.0±0.3%から10.4±0.3%に低下,n=5)の定常状態においては、呼吸のピーク値が呼吸頻度より大きく促進された。この高呼吸出力状態において筋細径神経求心性刺激により誘導される反射性の呼吸修飾を観察し、基準呼吸出力時と比べた。ピーク値がより促進されたこのような高呼吸出力状態においてはピーク値における反射性呼吸抑制が見られず、呼吸出力における呼吸抑制の程度は基準呼吸出力時に比べて大きく減弱された。ガス濃度による呼吸促進成分が侵害刺激に加算され、より大きな反射性の呼吸抑制を生じると予測したが、結果は、ガス濃度による呼吸促進成分により、反射性の呼吸抑制成分が相殺されたものと推測される。 次のステップとしてこの反射性呼吸修飾に、呼吸のレベル調節に係わると考えられる結合腕傍核がいかにかかわるかを神経ペプチド、Fos蛋白等を指標にして、明らかにしたい。
|