研究概要 |
侵害的なガス環境(低O_2、高CO_2)要素と、侵害受容器であるポリモーダル受容器入力による反射性の呼吸系ネガティブフィードバックの相互作用について検討した。呼吸系に最も直接的に作用するO_2、CO_2濃度を各々高低2つのレベルに変化されたガス環境(血液ガス連続モニタリングシステムにより動脈血ガス分圧をモニター)下で、麻酔下、人工呼吸下のネコを用いて実験を行った。横隔神経放電記録から呼吸出力を算出し、CO_2レスポンスカーブの変曲点から個体毎に基準呼吸出力を便宜的に決めた。この基準呼吸出力の約2倍の呼吸出力を生じる高CO_2(呼気CO_2:6.0±0.3%,n=10)、低O_2(呼気O_2:10.0±0.4%,n=4)においては、筋細径神経求心性刺激により誘導される反射性の呼吸抑制が基準呼吸出力時(各々呼気CO_2:4.3±0.2%;呼気O_2:20.5±0.3%)と比べ大きく減弱された。ガス環境による呼吸促進成分により、反射性の抑制効果が相殺されたものと推測される。この反射性呼吸抑制には内因性オピオイドが関与すると考えられてきたので、呼吸調節に係わると考えられる脳幹尾側領域の潅流液中のβ-エンドルフィンをエンザイムイムノアッセイ法により測定したところ、極めて侵害的なガス環境、8%O_2吸入(n=5)あるいは6%CO_2(n=5)吸入によっても酸素添加空気吸入と比べてその免疫活性に有意な変化はみられず、ガス環境による内因性オピオイド量の変化は認められなかった。モルヒネの静脈内投与による呼吸抑制作用は高CO_2環境(呼気CO_2:6.0±0.4%,n=6)による高呼吸出力状態においては基準呼吸出力時(呼気CO_2:4.7±0.4%,n=6)と比べ、より小さかった。ガス環境による呼吸促進成分により、モルヒネによる呼吸抑制効果が相殺されたものと推測される。異常ガス環境はオピオイド放出量に変化を与えず、その作用の程度に影響を与えたものと考えられる。
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