研究概要 |
体位、温度条件を変化させると体液ホメオスターシスに関与する血管系(末梢血管抵抗、末梢血流、中心静脈還流量、中心静脈圧、心容量等),体液組成分布、血管活性ホルモンが変動するがこれらの変動の引き金となる体液量の経時的な変動についての観察は殆ど見られなかった。下半身陰圧を行うと、循環血液量の下半身への貯留および血管内の水の間質側への移行があり、頚下浸水による血液の中枢則への移行とは逆の効果をもたらす。したがって下半身陰圧条件は血液量及び、電解質の変動の連続測定の検討にはよいモデルである。血漿密度連続測定装置(本研究購入設備)及び血漿電解質(Na, K, Cl)連続測定装置を開発しこれらを用いて種々な検討の結果末梢血流量および電解質濃度を連続測定出来るシステムを完成した。 実験:健康な男子被験者6名を使い下半身陰圧装置を使い一30mmHg陰圧負荷を行った結果全身反応としては血圧の低下と脈拍の増加が見られた。このとき負荷初期には一時的な血漿密度の減少(血漿量増加)があり、続いて密度の増加(血漿量減少)が見られた。この血漿量減少は陰圧暴露中(20分)持続した。電解質はNa, Clには変動がなかったが、Kは陰圧持続中増加した。これら諸変動は陰圧負荷終了後約20分で回復した。以上の結果により、従来考えられていたよりも血液量および体液組成分布の変動は速やかに起こりしかもその変動は必ずしも一方向ではないことが初めて確認できた。 今後の発展:このようにヒトにおける循環血液量の連続測定法が確立されたことにより、次のステップとして水温を変えて頸下浸水させバソプレッシン及びANP等の血管活性ホルモンの変動に加え、中心静脈圧及び心容量等の血管系との機能、及び循環血液量を連続的に測定することにより、体温調節機能と液性パラメーターと血管内外の水の移動とその相互関係を解析する。
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