研究概要 |
本研究は,中枢のバソプレシン(AVP)とその受容体の性質を明らかにし,中枢性の循環・体液調節機能,記憶・学習および情報の高次機能にどのように関与しているか,それら役割を受容体レベルで解明することを目的に検討しているが,本年度は次の成果を得た。 1) ラット脳について,オートラジオグラフイ-を併用した^3H-AVP結合実験を行った結果,海馬,扁桃体,中隔野および延髄弧束核にAVP受容体が認められたが,肝臓(V1a受容体)および腎臓(V2受容体)に比べると,その密度は低かった。 2) これら中枢のAVP受容体サブタイプの同定を,RT-PCR法で行った結果,健常ラットの腎臓,海馬および弧束核にV_2受容体mRNAの発現が認められた。 3) 1腎1クリップの手術を施した腎性体液過剰型高血圧モデルラットは,高血圧発症中期(手術後2週目)において,動脈圧受容器反射の著明な亢進が認められた.この時点の高血圧モデルラットの最後野に,健常ラットの最後野では発現しなかったV_2受容体のmRNAの発現を認めた. 4) 我々は海馬のAVP受容体が,膜試科による結合実験ではV1a,受容体mRNAの発現実験ではV_2の各サブタイプであることを報告している.この矛盾を解くための試みとして,ラット海馬切片を用い,AVP受容体サブタイプの特異的リガンドを併用した電気生理学的実験を行った結果,海馬のAVP受容体サブタイプは,V1a受容体サブタイプであることが示唆された.
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