研究概要 |
本研究は,中枢のバソプレシン(AVP)とその受容体の性質を明らかにし,中枢性の循環・体液調節機能,学習・記憶および情報行動に関連する脳の高次機能にどのように関与しているか,それら役割を受容体レベルで解明することを目的に検討した.平成8年度は,最終研究に当たり,次の成果を得た. (1)学習・記憶および情報行動とAVP受容体サブタイプとの関係 ラットを用い動物の学習・記憶の改善作用を8方向放射状課題を用い,スコポラミンによる空間認知障害に対するAVPの代謝産物(Asn-Cys(Cys)-Pro-Arg)が上記の改善作用に関係があることを示唆した. (2)中枢のAVP受容体サブタイプの同定への試みをRT-PCRで行なった.正常ラットと1腎1クリップ(1K1C)による腎性体液過剰型高血圧ラットで,脳幹部の最後野におけるAVP受容体の発現を調べた.その結果,V2mRNAの発現を認めたが,VlamRNAの発現は認められなかった.このことから,最後野のV2受容体が高血圧発症に関与していることが証明された(Neurosci.Lett.投稿中). (3)最後野に存在するAVP受容体のサブタイプの同定を電気生理学的に試みた.ラット延髄の最後野を含む400μmスライス標本を用い,潅流実験を行なった結果,AVP刺激による最後野神経の自発発火は抑制と興奮の両反応を示した. (4)脳の視床下部の支配を受けている下垂体前葉からのACTH遊離機能について,ラット下垂体前葉の初代培養細胞を用いて検討した.その結果,下垂体前葉からのACTH遊離を調節するAVP受容体は,従来のVlaまたはV2とは異なる型であることを確認した.
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