研究概要 |
ホスファチジルコリンからのセカンドメッセンジャーの生成と分解を調べるために,ホスホリパーゼDとリゾホスホリパーゼにつき研究を行った.我々ははじめて不飽和脂肪酸活性化型ホスホリパーゼD(分子量190K)をブタ肺ミクロソームから精製することに成功したが,本年度はその発展としてcDNAクローニングを行った.精製酵素の部分アミノ酸配列を決定し,一致するヒト配列をデータベースのなかに見出した,分子量も精製酵素のそれに一致したので,cDNAの供与を受け現在発現を試みている.また酵母(S. cerevisiae. Sch. pombe),ヒト,植物(ヒマ)のホスホリパーゼDのコンセンサス配列を用いてPCRを行ないラット脳cDNAライブラリーから低分子Gタンパク質活性化型酵素と思われる新しいcDNAクローンを得た.現在までにホスホリパーゼDの活性化に関係すると報告された低分子Gタンパク質はARF, Rho, Ralであるので,得られた配列を大腸菌,動物細胞で発現させ活性化に必要なGタンパク質を同定したい.またホスホリパーゼDをブタ大腸粘膜のミクロソームから精製している過程で,阻害タンパク質の存在が示されたので精製を行った.大腸粘膜ミクロソームからコール酸で可溶化して,イオン交換,キレートカラム,ゲル濾過,HPLCを用いてほぼ均一にまで精製した.今後クローニングを行い構造と機能を明らかにする予定である. リゾホスホリパーゼにはいくつかのアイソザイムが存在するが,今年度は24kdの酵素に対するcDNAをクローニングし,構造を明らかにした.酵素にはGXSXGモチーフが見出されリパーゼファミリーに属することが証明された.またHL-60細胞が顆粒球に分化する際本酵素が誘導されることが明らかになったが,メッセンジャーRNAの増加は見られず,酵素量のみが増加していたことから誘導のメカニズムとして転写後調節が考えられた.
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