研究課題/領域番号 |
07457029
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研究種目 |
一般研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
祖父江 憲治 大阪大学, 医学部, 教授 (20112047)
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研究分担者 |
林 謙一郎 大阪大学, 医学部, 助手 (90238105)
乾 誠 大阪大学, 医学部, 助教授 (70223237)
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キーワード | 平滑筋細胞 / 形質転換 / 細胞接着 / 細胞外マトリクス / カルデスモン / トロポミオシン / 平滑筋型α-アクチン / 遺伝子発現制御 |
研究概要 |
本研究は平滑筋細胞に特徴的な遺伝子発現を指標にして培養平滑筋細胞の分化形質維持システムを確立し、これを用いて平滑筋細胞の分化機構を解明することを目的として遂行した。カルデスモンアイソフォームの発現を分子マーカーして平滑筋細胞培養系の検索を行った結果、無血清培地・ラミニン存在下で培養すると分化形質を維持することを見い出した。また、血清存在下で培養を行うと、速やかに脱分化するが、無血清過培地に増殖因子、TGF-β,PDGFを単独に添加するだけで脱分化の指標となる低分子型カルデスモンの発現が誘導された。しかしながら、細胞増殖は認められず、細胞増殖とマーカー遺伝子の発現制御は各々別の細胞現象であることが判明した。この平滑筋細胞の形質依存性にアイソフォームの発現変換を決定するカルデスモン遺伝子エクソン3に内在する2ケ所の5-スプライス部位の選択に関するスプライシング解析から、hnRNPAlが低分子型カルデスモンmRNAの発現に関与していることを見い出した。また、平滑筋組織でのα1インテグリンの局在と平滑筋細胞分化に伴うα1インテグリン発現増加から、ラミニンの効果はその受容体であるα1β1インテグリンを介したものであると考えられるが、α1β1インテグリン以外にもラミニン結合蛋白質の関与を示唆する結果を得た。また、この研究過程で平滑筋細胞形質転換に伴いトロポミオシンもカルデスモンと同調してに分化型と脱分化型のアイソフォーム間で発現変換することを見い出した。この独自の分化型平滑筋細胞培養系を用いてカルデスモン遺伝子のプロモーターの解析を行なった結果、ユニークなCArGボックス様の配列(CCAAAAAAGG)が平滑筋細胞での転写に必要で、この配列と特異的に結合する蛋白質が平滑筋細胞の核抽出液中に存在することを明かにした。平滑筋型α-アクチンは血管平滑筋細胞と内臓平滑筋細胞では、その分化・脱分化の過程で全く逆の発現様式を示すことが明かになった。すなわち、血管平滑筋細胞では分化に伴い発現量が増加するのに対し、内臓平滑筋細胞では脱分化に伴い発現量が増加する。この現象は平滑筋型α-アクチン遺伝子の転写レベルで調節されていることを明かにした。
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