研究概要 |
1.アミノ基転移酵素の基質認識機構:アスパラギン酸、芳香族アミノ酸、分岐鎖アミノ酸の3種のアミノ基移転酵素(各々AST,ArT、BCT)につき、基質類似体存在下でのX線結晶解析を行い、各酵素のアミノ酸基質に対する特徴的な認識機構を明らかにした。1)α-COOHは、ASTとArTではArg386との2本の水素結合による平面構造を形成するが、BCTではTyr69の水酸基と、βターン主鎖のアミドへの水素結合を形成する。ASTとArTでは側鎖のCOOHはArg292との2本の水素結合形成で、ArTで芳香環は、それと同じ部位で、しかも活性中心の複数の残基のコンホメーション変化による水素結合網のかけかえで認識される。2)BCTで分岐鎖側鎖の認識を行う疎水性コアの構造もわかった。3)DNAシャフリングによりAST遺伝子にランダム変異を導入し、分岐鎖アミノ酸を認識できる変異酵素を作成した。 ピリドキサール酵素の反応機構:1)従来見出されていなかったASTの第2の反応過程が実働していることを証明した。2)芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)のLys303が内シッフ塩基を形成している残基であることを明らかにした。[Lys303Ala]酵素で生じる副反応を速度論的に解析し、このリシンがアミノ酸の脱炭酸過程には不要で、生成物の酵素からの遊離を促進する役を演じていることを証明した。アミノ酸脱炭酸酵素13種に高度に保存されている11残基についてAADCに部位特異的置換を行い、その役割を推定した。さらに、Arg334付近にflcxible loopがあり、基質結合によるその構造変化が外アルジミン形成に重要であることを推定した。3)トリプトファナーゼの大量生産系を確立した。本酵素のPLPの内シッフ塩基は、酵素活性を発現する弱塩基領域では不活性なアルダミン構造であるが、基質の結合によって、活性なケトエナミン構造へと誘導されることを証明した。
|