ジーンターゲテイングによる分泌型プロスタグランジンD合成酵素の機能解析

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07457033
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: (財)大阪バイオサイエンス研究所
• 研究代表者: 裏出 良博 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 副部長 (10201360)
• 研究分担者: 金岡 禧秀 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 研究員 (40271514) ; 松村 人志 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 副部長 (50173886) ; 早石 修 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 所長 (40025507)
• キーワード: 遺伝子ノックアウト / プロスタグランジン / リポカリン / プロスタグランジンD合成酵素 / クモ膜 / 脳脊髄液 / 精液

研究概要

1)マウスのリポカリン型PGD合成酵素の翻訳領域の90%をNeo耐性遺伝子に置き換え、上流にTk遺伝子を挿入したベクターを作成した。そのベクターをマウスES細胞に導入し、相同性遺伝子組換えによりPGD合成酵素遺伝子を欠損した5種類の独立したES細胞クローンを得た。それらのES細胞クローンの2種類からキメラマウスを得、その交配によりPGD合成酵素遺伝子ノックアウト(KO)マウスの作製に成功した。現在、それらのKOマウスの繁殖を進め、睡眠・覚醒リズムや睡眠エピソードおよび睡眠脳波解析の準備を進めている。
2)リポカリン型PGD合成酵素遺伝子の発現は、従来知られていた中枢神経系以外に、眼の網膜色素上皮や、睾丸、胎盤においても活発である事を証明した。
3)ヒトのリポカリン型PGD合成酵素に対するモノクローナル抗体を作製し、本酵素のサンドイッチ型ELISAを確立した。その測定法を用いてヒト各種体液中のリポカリン型PGD合成酵素(ベータ-・トレース蛋白質)の分析を行い、脳脊髄液や精液および羊水中に高濃度の本酵素蛋白質を検出し、血清中や尿中のPGD合成酵素濃度も正確に測定できる事を証明した。現在、臨床医学的な見地から、各種の疾患とPGD合成酵素濃度の相関の有無について研究を進めている。
4)リポカリン型PGD合成酵素の立体構造モデルを、本酵素と同じリポカリン・ファミリーに属し比較的ホモロジーの高い二種類のリポカリン蛋白質(マウス主要尿内蛋白質、ラット副睾丸レチノイン酸結合蛋白質)の結晶構造を基本座標としてホモロジーモデリングの手法により計算した。

研究成果

• [文献書誌] C.T.Beuckmann,et al: "Lipocalin-type prostaglandin D synthase (β-trace) is located in pigment epithelial cells of rat retina and accumulates within interphotoreceptor matrix." J.Neurosci.16. 6119-6124 (1996)
• [文献書誌] H.Oda.et al: "Quantitative sandwich immunosorbent assay of human secretory prostaglandin D synthase (β-trace)." Proc.Japan Acad.72. 108-111 (1996)
• [文献書誌] D.N.Melegos,et al: "Immunofluorometric assay of prostaglandin D synthase in human tissue extracts and fluids." Clini.Chem.42・12. 1984-1991 (1996)
• [文献書誌] Y.Urade,et al: "Molecular mechanism of sleep regulation by prostaglandin D_2." J.Lipid Mediators Cell Signalling. 14. 71-82 (1996)
• [文献書誌] H.Toh,et al: "Glutathione-independent prostaglandin D synthase as a lead molecule for designing new functional proteins." Protein Engineering. 9. 1067-1082 (1996)
• [文献書誌] T.Yamashima,et al: "Prostaglndin D synthase (β-trace) in human arachnoid and meningioma cells : roles as a cell maker or in CSF adsorption,tumorigenesis,and calcification process." J.Neurosci.(in press).