核内蛋白との相互作用によるDNAポリメラーゼα・プライマーゼの複製開始制御

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07457037
• 研究種目: 一般研究(B)
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 吉田 松年 名古屋大学, 医学部, 教授 (70090420)
• 研究分担者: 伊豆田 俊二 名古屋大学, 医学部, 助手 (50203047) ; 小泉 恵子 名古屋大学, 医学部, 講師 (00118027)
• キーワード: DNAポリメラーゼα / ポリADPリボシル化酵素 / Rbタンパク / 蛋白リン酸化 / フォスファターゼIIA

研究概要

本研究は哺乳類細胞のDNA複製酵素と調節因子との蛋白-蛋白相互作用を解析してG1/S移行の機構にアプローチすることを目的とする
従来我々は増殖細胞を抗DNAポリメラーゼα・モノクローナル抗体を用いて免疫組織化学的に解析し、核内ではDNAポリメラーゼα・プライマーゼ複合体は大きな構造体としてDNA複製部位に局在し、細胞周期に伴い離合集散を繰り返す事を明かにした。この複製複合体の実体に迫るため、DNAポリメラーゼαと蛋白相互作用によって結合する核内蛋白を検索した結果、T因子、MAPII、ポリADPリボシル化酵素(PARP)等を同定した。平成7年度においては、これらの因子のうち、PARPはRbと結合してその促進活性を失うことを認め、この性質は我々が既に発表したSV40T抗原の挙動と類似する。このことからPARPがT抗原の細胞性カウンターパートであり、Rb蛋白が複製複合体の活性調節及び解離に関与する可能性を示唆した。一方、リン酸化型のRb蛋白(ppRb)を精製し複製系酵素に及ぼす影響を調べたところ、ppRbが直接にDNAポリメラーゼα活性を強く促進する事を見い出した。この促進活性は、ppRbをポテト酸フォスファターゼあるいはウサギ筋肉蛋白フォスファターゼIIAで脱リン酸化することにより消失した。この結果は細胞周期においては、G1期において低リン酸化型のRb蛋白が他の因子を介して抑制的に、S期においてはリン酸化型Rbが促進的に複製を調節する可能性をしめすものとして興味深く、今後さらに解析を進める予定である。

研究成果

• [文献書誌] Mami Shoji-Kawaguchi: "Selective inhibition of DNA polymerase ε by phosphatidylinositol." J.Biochem.117. 1095-1099 (1995)
• [文献書誌] Takashi Murate: "Herbimycin a inhibits phorbol ester-induced morphologic changes,adhension,and Megakaryocytic Differentiation of the Leukemia Cell Line,MEG-01." Proc.Soc.Exp.Biol.Med.209. 270-278 (1995)
• [文献書誌] Jun′ichi Kobayashi: "Flavocristamides A and B.new DNA polymerase α inhibitors from a marine bacteirum Flavobacterium sp." Tetrahedron. 51. 10487-10490 (1995)
• [文献書誌] Kimiko Murakami-Murofushi: "Selective inhibition of DNA polymerase-α family with chemically synthesized derivatives of PHYLPA,a unique Physarum lysophosphatidic acid." Biochim. Biophys. Acta.1258. 57-60 (1995)
• [文献書誌] Shin-ichi Mizuno: "Portal vein branch occlusion induces cell proliferation of cholestatic rat liver." J.Surg.Res. 60. 249-257 (1996)
• [文献書誌] Shunji Izuta: "Chain termination with sugar-modified nucleotide analogs in the DNA synthesis by DNA polymerase γ." Nucleosides and Nucleotides. 15. 683-692 (1996)