本年度はWKYとSHRSPとの交雑により雌雄それぞれのF2を53、47匹作製し、その結果、F2は雌雄それぞれ合計115、124匹となった。 加齢に伴う血圧上昇は雌雄で異なっており、雄性の方が雌性に比べ血圧上昇は大きく、生後5ヵ月齢では約15mmHgの差があった。生後5ヵ月齢より食塩感受性を調べたところ、食塩感受性は雌雄で異なっていた。雌性の場合、群の平均血圧は食塩負荷12日後では変化せず、負荷1ヵ月後に有異な上昇が認められ、その後5ヵ月間の間上昇し続けた。しかし、雄性の場合、群の平均血圧は食塩負荷2ヵ月後にはじめて有異な上昇が認められたが、その後の5ヵ月の間有異な血圧上昇は認められなかった。雌雄とも群の平均血圧は12日間食塩負荷後では変わらなかったが、各個体について調べた結果、雄性群の場合は食塩負荷前の血圧が180mmHg以下では上昇傾向、それ以上では下降傾向が認められた。しかし、雌性ではそのような傾向は認められなかった。 全染色体をほぼ網羅する370のマイクロサテライトマーカーについてWKY/IzmとSHRSP/Izmとの間で多型性を調べたところ、多型性は約40%しか認められず、多型性を示す割合は染色体によって異なっていた。また、第3染色体上に存在するナトリウムチャンネル遺伝子を挟んで約132センチモルガン領域に41のミクロサテライトマーカーの存在が明らかになった。しかし、WKYとSHRSPとの間に多型性が見つかったのは24マーカーであった。これらマーカーと短期(12日間)食塩負荷後の血圧との連鎖分析を行ったところ、非常に強く連鎖する座位がナトリウムチャンネル遺伝子座位から約35センチモルガン離れたところに見つかった。短期食塩負荷による食塩感受性高血圧の分散の約24%がこの領域のみで説明可能であり、原因遺伝子はこれらマーカーを含んで十数センチモルガンの範囲に存在することが明らかになった。
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